other 森 司朗(東京学芸大学)

第6回大会 参加記

大会全体

第6回 日本コミュニティ心理学会に参加して

森 司朗(東京学芸大学)

 2003年6月28日、29日の両日に、鹿児島市にある鹿児島市町村自治会館において、第6回日本コミュニティ心理学会が開催された。天気はあいにく曇り・雨の天気であったが、時より錦江湾を挟んで桜島が姿をみせてくれていた。

午後1時より、今大会の大会会長である鹿児島大学の平川先生の開催の挨拶があり、早速大会日程の最初のプログラムである、国際キリスト大学の笹尾敏明先生の教育講演が開催された。演題は、「アメリカ・コミュニティ心理学会の動向:1995年(第5回大会)~2003年(第9回)のSCRA Biennial Conference に参加して」というテーマであった。笹尾先生のコミュニティ心理学/SCRAとの出会いからはじまり、SCRAの学会や研究の方向性、日本コミュニティ学会への今後の課題などのご講演であった。今後の日本コミュニティ心理学会の大きな方向性への示唆をいただけるものであり、「ルネッサンス人間としてのコミュニティ・サイコロジスト」という言葉が頭に残った。

続いて、2つのシンポジウムが行われた。最初は「コミュニティ・サイコロジストのNPO活動-「NPO法人FLC安心とつながりのコミュニティづくりネットワーク」の取り組みから-というテーマで村本先生(女性ライフサークル研究所/立命大学)を座長に先生らのNPO法人FLCの活動が発表された。いくつかの実践例の報告を踏まえ、今後の活動に関する抱負が報告され、まさにコミュニティ心理学の最前線の取り組みに出会ったような気がした。フロアーからは、実際に実践する上での問題点などについての質問などがだされた。このシンポジウムでは、問題意識を持ち、その問題に関して軽いフットワークで立ち向かうことが必要であると感じた。2番目のシンポジウムは、高畠先生の企画(武庫川女子大学)による「コミュニティ心理学から見たセクシャアル・ハラスメント」のテーマで発表が行われた。このセクシャアル・ハラスエントという現代の大きな問題に関して、高校、大学、そして司法の立場から、多面的な立場から討論された。生の、そして日常の中に潜む問題に関して、コミュニティ心理学が今取り組んでいけることは何かということに直面させられるシンポジウムであり、フロアーからも同様な点での質問が行われた。

以上、第一目は、13時から18時ぐらいまでの長時間に渡り、コミュニティ心理学の取り組みに関して多くの学びをさせていただいた。そして、勉強の後は、懇親会が行われ、鹿児島の郷土料理を中心にした食事を魚に多くの方々の親睦が図られた。

第二日目は朝からポスターセッションが行われた。多方面からのコミュニティアプローチの20演題の成果が報告され、それぞれで積極的なディスカッションが行われ、2時間という時間があっという間にたってしまった気がした。ポスター発表後は、総会が行われ、来年度は、近畿地区で行われることなどが決められた。

13時からは降籏先生(清泉女学院大学)企画の「コミュニティ心理学と政策づくりへの参加」という大会企画シンポジウムが行われた。話題提供として、安藤先生(九州大学名誉教授)が関与しなくては何の影響も与えないこと、介入のスタンス、システムへの接近などが頭に残り、ご発表の終わりに「芸者サイコロジスト(声がかからなくては生きていけない)」という捉え方には感銘させられた。提供者の辻井先生(中京大学)は、選択肢の必要性と公的でなく民間からのアプローチの必要性について語られ、降籏先生は、これまでの先生の取り組みが話された。指定討論者の中田先生(神奈川県立総合教育センター)からは、学校教育の中での取り組みに関して、コミュニティ心理学的な見方からの見通しを持ったアプローチの必要性などが指摘された。フロアーからは行政的なアプローチに関する意見や住民と行政をむすぶコミュニティ心理学の必要性などの意見が出され、活発な議論が進められた。

この2日間を通して、コミュニティ心理学アプローチに関して、具体的な取り組みや現状について討論が進められ、その結果、コミュニティ再生の新たな一歩が、日本の南の地に刻まれることになったのではないか。

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副会長 安藤延男 »