other 岡 桃子(立教大学大学院コミュニティ福祉学研究科人間関係学専攻)

第6回大会 参加記

ポスター発表

ポスターセッション 感想

岡 桃子(立教大学大学院コミュニティ福祉学研究科人間関係学専攻)

20ものポスター発表が一部屋で行われていた。ポスターセッション時間は2時間だったが30分もすると会場内は活気と熱気が立ち込め、汗をかいている人も見かけた。
口頭発表と違う点をあげるとすれば、この熱気と、発表者本人と話を交わしながら研究内容を聞けるという点、自分の関心のある発表に時間を割いて聞ける利点も挙げられる。気付くと時間が過ぎており、時間が足りなかった人もいるかもしれない。しかしその分、発表者、参加者双方にとって集中した密度の濃い時間だったのではないだろうか。
テーマは、医療・異文化・ボランティア・災害・高齢者・教育・行政・家庭・コミュニティ感覚・地域・クリニック現場……と対象、捉え方共に多岐にわたっていた。重なるテーマは並んでおり、焦点のあて方の違いが感じられより興味深いものとなっていた。
今回が私にとってコミュニティ心理学会初めての参加だったのだが、大変アカデミックでありながらも、著名な先生方のアットホームさに感動しコミュニティ心理学会の魅力と感じた。このテーマの幅広さもまさにコミュニティ心理学そのものなのだろうと思われる。現実に私達が生きている社会における社会的心理的問題を取り上げるその姿勢が、様々な視点を生み出しているに違いない。今回福祉学専攻の人からの発表もあったが、ポスター発表全般にわたって、コミュニティ心理学が、切り離せない福祉と心理をつなぐ極めて実践的な領域である側面が発揮されていた。
発表者ご本人と生の話を交わさせてもらったこともあり、いくつもの発表やその研究にいたる動機・経過のお話が本当に心に残っている。たくさんのお話を聞かせていただき非常に感謝している。
その中から今回ふたつだけ挙げさせてもらうと、まず『障害児のきょうだいへのグループ支援について』(津田)だが、これは障害児の親への支援活動が主流な中、きょうだいに目を向けた点が大変関心深いものであった。家庭内に障害児がいることによる人生観への影響は、諸外国と日本において国民性の違いが見受けられるというお話も心に残った。
次に『高齢者支援オンラインコミュニティの形成とその可能性』(平野)は、身体面・経済面などにおいて全面的支援を必要とまではいっておらず、サポートを供給する側からも見えにくい中間層に位置する高齢者への情報提供の可能性、また高齢者間での情報交換というシステムを作り上げることによるエンパワ―メントの側面が大変関心深い点であった。話を交わす中で出た「底上げ」という言葉を聞いた時、私の中でしっくりときた。それは上に挙げた2つの研究、その他多くののポスター発表においても共通している「見えにくくなっている問題へ焦点をあてたい」という研究者の動機・研究魂というか、そういった思いを会場でひしひしと感じていたのだが、各研究はもちろん、ポスター発表や学会自体が埋もれがちな現象や問題に光をあてる貴重な機会といえるのだろう。

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