山田麗子(安倍クリニック)
第6回大会 参加記
シンポジウム 「コミュニティー心理学から見たセクシャルハラスメント」
シンポジウム『コミュニティ心理学から見たセクシュアル・ハラスメント』について
山田麗子(安倍クリニック)
本シンポジウムは、丹羽先生によるセクシュアル・ハラスメント事例、高畠先生による大学におけるキャンパス・セクハラ、中村先生による高校におけるセクハラ問題への取り組み、辻本先生による弁護士の立場からのセクハラ裁判の取り組み、とセクシュアル・ハラスメント問題に対する多角的な視点からのご発表となり、今非常にホットな話題でもあり会場は大いに盛り上がり、あっという間の2時間でした。
近年、セクシュアル・ハラスメントの防止に関する人事院規則や文部科学省におけるセクシュアル・ハラスメントの防止等に関する規定及び運用通知などにより、大学内でのSH防止対策委員会なるものが次々と設立されているのを目の当たりにすることが増えてまいりました。それらを見聞した話や、私自身現在予備校でカウンセラー兼SH相談員をしている体験をもとに考えましても、SH問題については、従来の心理面接だけでは対応しきれないことを肌に感じておりました。防止対策委員会の設立からその活動に至るまで、内容は多岐にわたります。SHの事例は時には、裁判に持ち込むこともありますし、また、医療機関・法的機関・その組織内における様々な方との連携が必要不可欠で、伝統的な密室における心理面接だけでは対応できないことが多いです。私の働かせていただいている予備校では、被害者が加害者に直接会って話をすることもあります。その際は関係者が必ず立ち会いますし、セラピスト―クライエントの1体1の関係にとどまらないケースもあります。そのようなことを踏まえますと、危機介入やコラボレーション、広告活動、予防教育などたくさんのアプローチ方法のあるコミュニティ心理学的介入の有効性を存分に活かせる問題であることに気がつきました。
恥ずかしながら私自身、コミュニティ心理学を学んでおりながらSH相談と結びつかないところがありました。というのも、SH相談は、私の体験上ですが、システムや法的な問題が中心であり、臨床心理学と離れたところでしか捉えられませんでした。ですので、SH問題をコミュニティ心理学的に捉えられた、高畠先生を中心とする本シンポジウムを拝聴し、いまだに心理面接や心理査定を中心に心理臨床を捉えていた私自身に対する気付きと反省にもなり、目の醒める思いでした。今後、自分の現場でもコミュニティ心理学的視点をもとに、もう一度SH相談を捉え直してみようと思います。
シンポジウムでSHへの対策として、罰による抑制と教育による抑制のどちらが有効であるのか、という話題が出ました。弁護士の辻本先生から罰による抑制の有効性を伺い、また高校の中村先生からは教育による抑制について伺いました。それぞれの立場からのアプローチがあって当然だと思います。では一体、心理学の立場からのSHへのアプローチはなんなのか、専門性をどう活かせるのかなどを考えた時、そのヒントは本シンポジウムの中にあったと思います。「被害者の気持ちなんて本当には分からない」と仰った辻本先生のお言葉は、SH問題に関わらず日頃臨床現場にいる自分にとって考えさせられる一言でした。
最近のトピックであるSH問題ですが、これからもっと心理の立場としての介入や問題への捉え方を考えてまいりたいと思います。そのために、本シンポジウムは、非常に内容充実で参考になりました。
最後に、毅然とした高畠先生ご自身の姿勢や立ち振る舞い自体に、一聴衆である私がエンパワーメントされました。どうもありがとうございました。