other 三枝将史(立教大学大学院文学研究科)

第6回大会 参加記

シンポジウム 「コミュニティ・サイコロジストのNPO活動」

「コミュニティ・サイコロジストのNPO活動」感想

三枝将史(立教大学大学院文学研究科)

近年コミュニティにおけるボランティアの存在は無視できないものがある。それはサービスとして主に行政によって提供されるサービスに比べて安価に、そして細かなところまで行き届いた活動がなされるからである。ただし、ボランティアの存在はどこか「同好会的」なイメージをもってとらえられることが多いことや、コミュニティ内で確固たる地位を得ていないことが多く、結果として財政上の問題や専門家との連携が難しいことが問題であった。しかし、この問題を解決すべく、NPO法人という形で法的な位置付けを得て活動を行うボランティアが増加してきている。今回のシンポジウムを企画した、(有)女性ライフサイクル研究所とNPO法人FLCネットワークもその一つである。この団体は以前は一つの任意団体としてドメスティックバイオレンスや児童虐待、子育て支援等に関わる様々な講座や事業をやってきた団体であった。それが事業ごとに一部を有限会社、一部をNPO法人と組織改変を行ったものである。NPO法人となったことで従来の任意団体としての活動よりもどのような点でメリットとなったか、組織にどのような変化がおこったのか、非常に期待してシンポジウムを聞くこととした。シンポジウム内では現在、この団体が取り組んでいる様々な講座やプロジェクトの内容を紹介し、それがコミュニティ・サイコロジストの活動としてどのような意義をもっているのかという考察、この団体がコミュニティ内で貴重な援助資源としてその地位を確立している様子を感じ取れる内容であった。
また、NPO法人となることによって各種助成金を得る際に説明が容易になったことといったメリットや今後一層組織を活性化していくには、今後財政基盤を一層強固なものにしていくためには、といった課題など法人格を取得し、まさにその歩みを始めようとしている団体の生の声を聞くことができ、大変興味深いものであった。コミュニティ心理学には「非専門家との連携」という概念が重視されていながらも、なかなかその実践がなされ、報告されることはなかった。今回のシンポジウムでなされた発表は、コミュニティ・サイコロジストがコミュニティにおいて必要な援助資源を整備するというこの概念が実践された画期的なものであったのではないか。ただ、どうしてもタイトルどおりの「コミュニティ・サイコロジストとNPO活動」というよりは、「NPO法人FLCネットワーク」の活動のPRといった色合いが強く出すぎていたような気がするところが残念であったが、NPO設立に至るまでの経緯、そこに至るまでの道のりなども紹介されており、このシンポジウムの内容を参考に今後様々なNPOがコミュニティに整備されて行くのではないか、そういう可能性を感じさせる大変重要な意義をもつシンポジウムであったのではないかという感想をもった。

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